せ ん にゅ う

下のほうから、男子の声が階段にワンワン響いてくる。

「上だぞ!」「捕まえるんだ!!」「食券食券!」「俺が先だ!」

……男子って、ったく……

その時、ポケットの中でケータイが鳴った。

「はい、こちらユリ」

『あ、ユリちゃーん?』

マリだ。

『ユリちゃん、なにか派手なことしちゃったぁ? 今こっち衛星からみてるけどぉ、すごいことになってなーい?』

コイツ……ちゃんと知ってて訊くんだから、もう。

「もうバーコード最悪よ、マジ最悪!」

『バーコードぉ?』

「いいから、とりあえず奈木くんがどこにいるか、わかんない?」

『うん~、奈木くんはねー』

返事を待ってる間に、すぐ真下の踊り場に男子が現れる。

「いた!」「コイツか!」「捕まえろ!!」「相手は一人だー!」

「ごめん、ちょっと待ってて」

『うんー?』

あたしはマリとの通信を一度中断して、ケータイ片手に飛び出した。