せ ん にゅ う

一応、持ってきておいてよかった。

屋上は鍵がかかってるから、一般生はすぐには来られない。

なら、十分くらい時間があるはず。

あたしは鞄の中から、いつも仕事で着てる黒いレザースーツを取り出した。

サングラスに、深く被れる黒いキャップ。

つまりあたしの仕事着!

黒づくめ……夜ならともかく、朝の学校じゃもろ目立ちだけど、素顔を見られるよりマシね。

ガチャ!

音がして、屋上のドアが開いた。

「いたぞー!!」「食券は俺がもらう!」「捕まえろ――!」

男子が津波のように。

落ち着いて、ポケットから白い玉を三つ取り出した。

地面に叩きつける。瞬間、バフォン! と爆発して、周囲が白い煙に覆われた。

「なんだこれ!?」「煙幕だ!」「ごっほ、ごほげほ」

あわてふためく男子達を、

「はぁーいごめんなさいよぉー!!」

あたしは大きく飛んで、頭を踏んづけた。

次の男子の頭、また次の男子の頭、またまた次の男子の頭を踏んづけて、入り口へ。

「それじゃ、BYE-BYEっ」

「後ろだ!!」「逃げられるぞ!」

気付いた頃には遅いのよ。

ガチャン。

あたしは中から鍵をかけてやった。