「津久井先輩」 【完】






「津久井先輩、好きです!」


初めての告白は、初夏にしては随分と気温の上がった暑い日だった。


気温と緊張で額に汗を浮かべた私は、真っ赤な顔をして先輩の前に立っていた。

どこからか蝉の鳴き声も聞こえてくるムードもへったくれもない体育館裏で、ただ思いの丈を叫ぶ様な告白に先輩は「ありがとう」と言ってくれた。

ただその顔は私の好きな柔らかい笑みではなく、気まずそうな困惑している様な、そんな表情だった。


この瞬間、答えはわかってしまった。

玉砕覚悟の告白でも、どこかで奇跡を信じていた自分が恥ずかしくなる程に、「あ、ダメだ」って悟った。


だけど「ごめん」その言葉を聞きたくなくて、「ありがとう」の次の言葉を発しようとした先輩の言葉に被せるように再び大きな声を出した私は、きっと、酷く迷惑な後輩だったと思う。

こんな後輩に好きになられてしまった先輩が気の毒だと、自分のことながらに思ったのをよく覚えている。




「私っ、諦めませんから!」



「絶対、絶対、ぜーったいに、先輩のこと落として見せますから!」




威勢よく言い放った私を先輩はどんな気持ちで見ていたんだろう。




人生初めての恋で、人生初めての告白で、人生初めての失恋で。



私の初めては、全部、先輩のものになった。