先輩がいなくなった体育館裏で、一人佇む。
目を閉じれば先輩と過した二年間が瞼の裏に浮んできて、押し寄せる寂しさと喪失感にどうにかなってしまいそうになる。
声の低さも、手のひらの温もりも、匂いだって。
大好きな笑顔だって、鮮明に思い出せる。
「四月になったら髪切ろうかな」
まだまだ、“でした”になるには時間を要するかもしれないけれど、“いつか”はきっと来てくれるから。
だから先輩、あなたの為に伸ばしたこの髪の毛とあとほんの少しだけ過ごさせてください。
いつか笑って「津久井先輩の事が大好きでした」と言える様に。
冬の残り香と春の訪れが混ざった三月の優しい風が慰める様に頬を撫でた。
【完】



