「津久井先輩」 【完】






今、目の前に立つ私はあの暑い夏の日とは全然違うだろう。

汗ばんでいないし、髪の毛は伸びたし、あの頃より少しは可愛くなったと思いたし、何よりあの頃よりずっと熱くて大きな想いをこの胸に抱えている。









卒業式が行われている間中、私は先輩だけを見つめていた。

伸ばされた背筋に凛々しい後ろ姿、入場から退場まで、先輩をただただ見つめていた。

一分でも一秒でも先輩の姿を目に焼き付けたくて、一分でも一秒でもいいから式が伸びてくれないかなと願っていた。



そして式が終わり、割れんばかりの拍手の中会場を後にする先輩の姿は本当に格好良くて、もうさよならだなんて思いたくないけれど、先輩を諦めなくてはならないなんて寂し過ぎるけれど、卒業しないでって思うけれど、私だって先輩の卒業を祝福していないわけではないから、涙で滲む視界の中、必死に涙が零れ落ちない様に拍手を送った。