「津久井先輩」 【完】





先輩に会えない学校はなんだか色褪せて見えてつまらなかったけど、もしかしたら用事があって先輩が登校するかもしれないなんて淡い期待を抱いて身支度を整えた。

いつ先輩と会ってもいいようにメイクもして、髪の毛だって毎日念入りにケアをして。

面倒くさがりな私はずっとショートカットだったけど、先輩がロングの方が好きだって話を聞いてから伸ばし続けた髪の毛は背中の半分辺りまで伸びた。

その髪の毛のケアは正直、手間がかかる。

ドライヤーで乾かすのだって一苦労だ。

だけど先輩の好きなロングの髪の毛をなるべく綺麗に保ちたい一心で日々のケアを怠った事はない。




もう三年生の気配がすっかりなくなった校舎はどこか寂しくて。

というより津久井先輩のいない校舎が、か。



「⋯先輩、」


移動教室の合間、たまたま通りかかった図書室は、先輩と一緒にテスト勉強をした思い出が残っている。

このままじゃ赤点だと嘆く私に「仕方ないな」と苦笑いをしながら勉強を教えてくれたっけ。



「なに感傷に浸ってるんだか⋯」




先輩に会えなくなってから、学校中に先輩との思い出を探しては一人寂しくなっていた。


告白した体育館裏、先輩の体育の授業を教室から眺めたグラウンド、一緒に食べましょう!と無理やり誘った食堂、すれ違った廊下、同級生と戯れる先輩はどんな感じなんだろう?とドキドキしながら覗いた三年生の教室。


そこら中に先輩との思い出を探して、見つけて。


それはまるでこの恋の終わりへのカウントダウンを数えている様で、諦め方を探している様で、とても寂しくなったけれど、思い出を思い出さずにはいられない程、この二年間の学校生活の中には津久井先輩が溢れている。




「⋯先輩っ」




じわりと滲んだ視界で、私は確かにこの恋が終わる気配を感じていた。