~姫side~
式は進み、副校長先生が「門出の言葉。 卒業生代表、熊野 陽太。」と言った。
陽太「はい」
陽太は返事をして、立ち上がった。
副校長先生「星葉 姫。」
私も「はい」と返事をして、立ち上がった。
そして、お互いを全く見ずに、私たちは歩行を合わせて、マイクの前へと移動し、しっかりと礼をした。

そして、陽太が前を向きながら、言い始めた。
原稿はない。 私たちは内容を暗記してきた。
陽太「門出の言葉。 桜が咲き始め、春の訪れを感じる今日、僕たちは聖NS学園を卒業します。」
そして、それぞれの思いを話し、次へと進んだ。
姫「1,2年生の皆さん、私たちが築き上げた聖NS学園の伝統を、これからも受け継いでいってください。 そして、学年の枠を超えて、学校生活を楽しんでください。」
陽太「また、ここまで僕たちを成長させてくれた、先生方、保護者の皆様には本当に感謝しています。 ありがとうございます。」
姫「私たちは、聖NS学年での思い出や学びとともに、それぞれの進路へ進みます。 改めて、3年間本当にありがとうございました。 長くなりましたが、以上で門出の言葉とさせて頂きます。」
陽太「令和4年3月23日。 卒業生代表、熊野 陽太。」
姫「星葉 姫。」
私たちは、しっかりと礼をした。
次の瞬間、大きな温かい拍手が体育館を包んだ。
本来、卒業式などの式典は、拍手は禁止されている。
だが、私たち以外のほとんどの人が、先生も含め、拍手をしていた。
中には、感動して泣いている人もいた。
私たちが自分の席に戻るまで、拍手はずっと続いた。

実は、これは陽太の作戦だった。
3月18日、卒業式の5日前。
門出の言葉の担当が私たちに決まった。
そして、週末を利用し、2人で協力し、原稿を考えた。
3月21日、卒業式の2日前。
私たちは朝早く登校し、空き教室で話をしていた。
陽太「姫、門出の言葉かっこよくやりたくない?w」
姫「やりたいw でも、どうするの?」
陽太「お互いを見ずに堂々と歩いて、礼する。 後は、原稿なしで門出の言葉言おう」
姫「いやいや?! 待ってw マジで言ってる?! 卒業式まであと2日しかないんだよ?!」
陽太「うん」
陽太の目は本気だった。
姫「でも、誰も今まで成功してないんだよ?!」
陽太「だからこそ、やるんだろ」
姫「、、、、、」
私は不安で俯いてしまった。
陽太「姫」
陽太はそう言うと、俯いている私の顔を上げさせた。
陽太「僕たちならできる。 一緒にやろう?」
姫「わかった、頑張ろう!」
そうして、私たちは2日間、朝、昼休み、放課後を使い、練習を続けた。
それがこの成果だ。

私はものすごくうれしかった。
達成感でいっぱいだった。