「見ろ、莉羅。あそこのカップルなんて人前でも気にせずいちゃついてる」

「……ですね」

 カップルだけあって、こういった場でも気にせずいちゃつくカップルも当然いるだろうとは思っていたけど、やっぱりって感じだ。
 堂々といちゃついている。

「俺たちもカップル感、出さないとな」

「……ん?」

 カップル感? カップル感とは?
 
「とりあえず、肩でも抱いてみるか」

「え?……っ!!」

 蔵間さんは私を抱き寄せると、左肩をグッと引き寄せる。

「え、あの……!?」

 いや、待って!これどういう状況!? 

「莉羅は、周り見て怪しいヤツいないか、監視して」

 そして鼓動が高鳴る中、耳元でそう言われる。

「……へ?」

 何を言われるのかと思ったら……それ!? もう!期待させるようなことしないでよ!
 って……。あれ?なんで私、ちょっと残念だなんて思ってる訳?
 いやいや!別に残念でもなんでもないのに?

「ちょっとでも怪しい動きしてるヤツがいたら、すぐ俺に言えよ」

「わ、分かってます……!」
 
 そう答えた私に、蔵間さんは「莉羅、なんか怒ってる?」とすかさず聞いてくる。

「お、怒ってません!」
 
 なんでそうなるの!