後輩くん、本性注意。

静かにしゃがんで、するっと東雲くんの腕から抜け出そう。

・・・と、思ったのに。



バサバサバサッ!


「うわぁ⁉︎」

「・・・っゃ⁉︎」


みっちゃんが運良く教科書を全部落としたので、グッドタイミング!と思って動こうとした瞬間、後ろから顎をぐい、と持ち上げられた。

私よりも大きな手だった。

これじゃ下にしゃがもうにもしゃがめない。


みっちゃんはぶつぶつ言いながら教科書を拾ってて、当然こちらには気づいていない。


「っちょ、東雲くんなんで・・・っ」

そして、唇を寄せて囁かれたのは。


「駄目ですよ先輩、勝手に逃げ出そうとしちゃ」


みっちゃんには聞こえない程に小さくても――低く、脳まで響くくらい艶っぽい声。


「――ぁ・・・、」



・・・駄目だ。


この声は駄目だと、どこかで警報が鳴った。



――危険だ。



何の機能が停止したのか知らないけれど、動けない。


背筋がぞくっとして、喉に触れる手がやけに実感を伴った触覚をもたらす。