それから毎日の放課後、王子は私たちの喫茶店に足を運んでくれた。


「コーヒー、ミルク多めで」


 頼むのはいつも一緒。


 やっぱり毎回楽しくなさそうに思えた。


 …なんか疲れてるのかな?


 その時、私の頭につーちゃんの言った言葉がよぎった。


『王子、甘い物好きって有名なのよね。コーヒーが苦いんじゃない?』


 …もしかして。私は自分で淹れたコーヒーを王子に持って行った。


「コーヒー、ミルク多めでございます」


「ありがとうございます」


 と言って、王子はコーヒーをひとくち。


「…っ!…あの、これって…」


「はい?コーヒーのミルク多めでございますが?」


 私はにっこりと笑って答える。


「…いえ、ありがとうございます」


 王子は少し不思議そうな顔をしながらも、再びコーヒーを飲み始めた。


 その顔から、少し楽しさが感じられた。


 …良かった、合ってた。


 王子、やっぱり甘いもの好きじゃなかったんだ。…周りから勝手にそう思われてて、我慢して甘いもの食べてたのかな。


 これからは、私が王子のコーヒーを淹れようと、心に決めた。