「ねぇねぇつーちゃん。さっきから廊下がざわざわしてるんだけど、なにかあるの?」


「あー、ちーちゃんは転校してきたばかりだから知らないよね」


 うん。なにがあるの?


「…この学校にはね、ミルク王子がいるの」


 ミルク王子?なにそれ。


「この学校で1番カッコいいって言われてるの。…3年1組の道宮アサヒ先輩のこと。成績はトップクラスでスポーツ万能。しかも笑顔がとても甘いらしいのよ」


 そう話すつーちゃんはなんか呆れているようだった。


「つーちゃんはその王子のこと好きじゃないの?」


「うん、なんかあの笑顔が少し嫌い。…ちーちゃんはそういうの好き?」


「…私は好きかも。ちょっと見てくるね!」


 私は廊下へと駆け出した。


「道宮せんぱ〜い!今度遊び行きませんか?」


「誘ってくれてありがとう。でも、また今度ね?」


「アサヒ、これあげる!」


「ありがとう」


 あの人がミルク王子か。


 少し茶色がかった髪色に目元まである前髪。そして切れ長の瞳。


 …カッコいい…。


 誰しもがそう思う程のイケメンだった。


 そして女子からのおしゃべり攻撃に嫌な顔1つせずにしかも笑顔で対応している。すごい。


「ちーちゃん、あの人がミルク王子だよ」


「つーちゃん、私あの人が好きになったかもしれない」


「え!?…ま、まぁ私は応援するけど、前途多難よ?」


「…私が先輩とどうなりたいとかはないよ。想っていられるだけでいい」


 先輩の姿を私の瞳が捉えた瞬間、私の世界はキラキラと輝き始めたんだ。