昼休み、ちーちゃんは道宮先輩に言われた通り屋上へと向かって行った。…とても不安そうな顔をしていたな。


 道宮先輩、ちーちゃんになんかしたら、本当に許さないから。


 …でも、ちーちゃんいないと暇だな。私、ちーちゃん以外に仲良い女子、そこまでいないから。


 そんなことを思っていると、教室のドアがガラガラと開いた。


「なーなせちゃん、今暇でしょ?」


「…なんで来たんですか」


「いやー、立花ちゃんアサヒに呼ばれて屋上に行っちゃったからさ。たぶん七瀬ちゃん暇だろーなーって思ってさ」


「…別に、暇じゃないです」


 いや、暇だけど、上山先輩と一緒にいるのは疲れる。もうホントどっか行って欲しい。


「てかさー、七瀬ちゃん下の名前なんなの?」


「あの、上山先輩、話聞いてますか?」


 私の声なんて気にも止めずに、迷いもなく教室に入ってきて、ちーちゃんの席に座った。


「俺のことはカズでいいよ。…七瀬ちゃん下の名前は?」


 いやいや、先輩のことを呼び捨てで呼べるわけないでしょ。


「…上山先輩には教えません」


「えーなんでよー」


 私がどんな態度をとっても、上山先輩はいつもニコニコ笑ってる。


 たぶんこの人、人気者なんだろうな。


 上山先輩は昼休みが終わるギリギリまで、私たちの教室にいた。