あれから1週間、私は先輩と言葉を交わしていない。喫茶店にも来ていない。


 さらにそれに畳み掛けるように、ある行事が重なった。


 …私は、明日から修学旅行だ。


「チハルー、もう上がっていいわよ!」


「はーい!」


 修学旅行前の最後の仕事を終えて、私は自分の部屋に戻った。


 ピコンッ。


 部屋に入った瞬間、スマホの通知が来た。


 あ、つーちゃんからだ。


『外に出てきて』


 外?…なんでだろ。


 1階に降りて玄関のドアを開ける。


「ちーちゃん、やっほー」


「つーちゃん、どうしたの、こんな夜に」


 今は午後8時を過ぎている。夏だからとはいえしっかり夜だ。


「いやーなんか頼まれてね?…じゃ、どうぞ」


 つーちゃんの後ろから出てきたのは、


「…せ、先輩…」
 

「…立花」


 とても悲しそうなオーラをまとった先輩だった。


「じゃあ私はこれで。…道宮先輩、ちーちゃん泣かしたら許しませんから」


 ん?後半部分が声が小さくて聞こえなかった。つーちゃんなんて言ったんだろう。


「…わかってるよ。立花、近くの公園、行こう」