「チハル先輩、道宮先輩来ましたよ」


 と、リツくんが私に小声で言う。


 え、先輩が…?


「チハル先輩、注文取りに行きますか?」
 

「…いや、いいよ。リツくん取ってきて」


 うそ。本当は私が行きたい。


 でも、もし姫川先輩と一緒に来てたら。


 ここ、駅前だし可能性はなくはない。


 まぁ他にもカフェはあるんだけど。


「アサヒ、何頼む?」


 と、女の子らしい高い声が聞こえた。


 …やっぱり。


「チハル先輩、いいんですか?」


「うん。…でも、コーヒーは私が淹れていい?」


 たとえ私が注文を取らなくても、コーヒーは先輩に淹れたい。


「はい、それは全然いいんですけど…」


「ありがとう、じゃあお願いね」


 そして、タイミングよく呼び出しのベルが鳴った。


「はい!」


 と、元気よく返事をして、リツくんが注文を取りに行った。