2人並んで廊下を歩く。先輩とのニセ恋人もそろそろ2週間を迎える。


 私たちの仲は公認らしく、もう誰も何も言ってこない。


 …じゃあニセカノでいる意味ってないのでは?


 先輩が言っていた女避けはもうできたと思うし。


 そんなことを考えながら、目線よりも少し高い先輩の顔を見上げたその時、


「アサヒー!!」


「え、ハリナ?」


 正面から手を大きく振りながら、姫川先輩が走ってきた。


「ハリナ、アサヒに会いたくて待ってたんだぁ〜」


 と、姫川先輩は自然に道宮先輩の腕に絡みつく。


 私の胸の奥がチクッと傷んだのがわかった。


「僕、今彼女と帰ってるんだけど」


「えー?…たぶんその子、本当の彼女じゃないでしょ」


「…え?」


 え、姫川先輩、気づいてたの…?


「なんか2人の間に、距離というか壁というか、そういうのが見えるんだよね」


「…」


 私たちは何も言い返せなかった。だって、全部本当だから。


 そう、私は所詮ニセカノ。道宮先輩には姫川先輩がいる。


「…道宮先輩、私手伝いがあるので先に行きますね」


 と、早歩きでその場を後にしたが、道宮先輩は私を引き止めなかった。


 私には、それが先輩の答えのように思えた。