「遅い。…早く来いよ」


 昼休み、私は急いでご飯を食べて、ダッシュで屋上に来た。


「…ごめんなさい」


 やっぱり先輩不機嫌だ。


「お前、なんで先に行ったんだよ」


 うん、それだよね。そうだと思った。


「なんか、先輩がいっぱいいて、居にくくて」


「…せっかくお前のっ…」


「あ、いた!立花チハルさん!」


 …え?


 この場の雰囲気とは到底似合わない明るい声がして、屋上の入り口を見ると、無邪気な笑顔の男の子がいた。


 今、私の名前呼んだよね…?


 その男の子は私のもとへ駆け寄ると、私の右手を両手で握った。


「俺、1年の漆間リツっていいます!…明日からよろしくお願いします!」


「「…え?」」


 男の子…漆間くんは、私たちの当惑した雰囲気なんて気にもせずに、ただ私の右手を握って、にこにこ笑っていた。