最後まで弾けたら

パチパチパチパチ…

後ろから拍手が聞こえた



あ…杉山いたんだった



指先が震えて

全身が震えた



「不安、だよね…」



杉山の手が

また私の背中を

支えるように優しく当たった



温かくて

すごく安心する



「最後まで、弾けたね
バッチリじゃん!」



その声に

また安心する



「杉山、ありがと…」



「毎日聴きに来ようか?」



「大丈夫
杉山も走んなきゃでしょ」



そう言った声が

まだ少し震えてた



杉山が

そっと私の手を握った



あ…あの時

先生の手を握った杉山を思い出した



杉山が握ってくれたら

不思議とすごく安心した



ずっと握っててほしいって

思ってしまう



「浅倉が今、何考えてるか
オレ、わかるよ」



杉山が私の視界に入ってきた



ドキドキして

すぐに視線を外した



杉山の手が

ゆっくり私を抱きしめた



もっとドキドキした



なのに

杉山の胸に身体を委ねた



ドキドキも緊張も

全部杉山に吸い取られてく



杉山は心強くて

すごく心地よかった



「こーすると
なんか、安心しない?

オレ、1年の時、走れなかった時期あって…
そしたら先生が
オレの背中に手を当ててくれたんだ

頑張ってる人は絶対大丈夫だから…って…
それでオレ、なんかまた走れた」



そーだったんだ

杉山もそんな時あったんだ



杉山は

それから先生が好きになったのかな?



今なら私もわかるかも

杉山の気持ち