次の日の朝。私と昨日の男の子、大倉くんは図書室で委員の作業をしていた。


「おい、お前、昨日のことまだ謝ってないだろ」


 私にしか聞こえない小さな声で、大倉くんが言った。


 昨日のことって、大倉くんを弟だと思ったことかな…?


「そのことは、本当にごめん」


「よろしい」


 私が謝ると、少し上から目線で許してもらえた。


 こんなに言うってことは、大倉くん、身長気にしてるのかな…。


 そんなことを考えながら黙々と作業をしていると、


「…っ…!」


 隣から声にならない声が聞こえた。


 声のした方を見ると、大倉くんが目いっぱい背伸びをして、本棚の1番上に本を直そうとしていた。


 でも、あと少し、足りない。


 私が代わりに直そうかな…。でも身長を気にしてるから、私がやるよ、って言ったら逆効果かな…。


 どうにかして、さりげなくできないかな…。


 大倉くんの持つ本を見ると、それは私が中学生の頃に好きだった本だった。


 あ、そうだっ…!


「大倉くん、あの、さ…」


「なんだよ」


「その本、ちょっと貸してくれない…?」


 大倉くんの持つ本を指差しながら言うと、私の意図を察したのか、大倉くんはすぐに不機嫌な顔になった。


「なんだよ、俺がっ…」


「なんだよってなに?…私その本昔好きだったの。だから少し見せてよ」


 大倉くんが怒る前に、私が言葉を上から重ねた。


「…そーかよ」


 すると大倉くんは渋々本を渡してくれた。


「ありがとう」


 私はその本を見るフリをしながら横目で大倉くんを見る。


 大倉くんの持つ本はもうほとんどない。たぶんすぐに終わるだろう。