キミよりも高いセカイ

「大倉くん…?」


 井下くんと2人で玄関まで行くと、靴箱にもたれかかる人影に目が止まった。


「青峰。…井下も一緒か」


 え、なんで…?先に帰ったんじゃ。


 少し混乱している私の肩を、井下くんがポンッと叩いた。


「青峰さん、僕先に帰るね」


 と小声で言った。


 井下くんがいなくなり、私と大倉くんの2人だけとなった夕暮れの学校。ピュウッと風の音が聞こえた。


「青峰、お前井下と帰んないの?」


 …なんで?


「…お前の彼氏だろ」


 え!?もしかして私と井下くんが付き合ってるって思ってたの!?


「大倉くん、私井下くんと付き合ってないよ。…告白は、されたけど断ったし」


「は、なんで断ったんだよ」


「…好きな人いるから」


「…だれだよ」


 私と井下くんが付き合ってなかったと聞いて、少しトーンが上がっていた大倉くんの声が、また低くなってしまった。


「…その人は、いつも明るくて、少し子供っぽいところもあるけど、私がピンチの時には助けてくれる」


 そう、そんなヒーローみたいな人。


「そして、今、目の前にいる。…私は大倉ユウリくんが、好きです」


 私のそれを聞いた途端、彼の顔は夕日に染まった。


「…ムカつく」


 大倉くんが私を壁に追い詰めて、顔を近づける。そして、私の視界は彼の顔で埋め尽くされた。


 …え、何が、起きたの…?


 1秒がとても長く感じられた。2人だけの空間の中で、風だけが通り抜けることを許された。


 ほんの少し時間が経ち、大倉くんは私からゆっくりと離れた。


「…ムカつく。俺ばっかりもっと好きになる」


 至近距離で私を見つめる瞳から、もう逃げられない。


「俺も青峰が好きだ。お前の優しさに惹かれた。…俺と、付き合ってください」


 その瞬間、外の木々がざわざわとゆらめいた。気持ちの良い春風が私たちを包み込む。


「…はい、喜んで!」