「私、…好きな人ができたから」


 私は下を向いたまま言う。


「その好きな人って、大倉くん…?」


 私はゆっくりと頷く。


 すると井下くんは力を完全に緩めて、私の隣に座った。


「そっか…」


「ごめん、井下くん」


 井下くんは俯いて片手で顔を覆っていた。


「ううん、ちゃんと考えてくれてありがとう。…青峰さん、少し僕の話聞いてくれる…?」


 私が首を縦に振ると、井下くんは顔を上げて、まっすぐと前を見つめて、ゆっくりと話し始めた。