「…青峰さん!」


 座り込んで呆然とする私のもとに、井下くんが駆け寄る。


「青峰さん、とりあえず教室に行こうか」


 力が抜けて、自力で立てない私を引き上げてくれる井下くん。


 …でも、この優しさに甘えちゃ、ダメだ。叶わなくても、このまま曖昧にしてたら、井下くんに失礼だ。


「井下くん。…私井下くんの気持ちには答えられない…」


 私の声が井下くんの耳に届いた一瞬、私を支える井下くんの右手の力が緩んだ。


「…なんで?」


 もう叶わないってわかっていても、自分の気持ちに嘘はつけない。


「私、…好きな人ができたから」


 恥ずかしさから、井下くんの顔を見れなかった。


 少しの間、沈黙が続いた。