余命宣告された君と恋をした

「行ってきます」

いつも通りに学校を出る。

ただひとつだけ違うことといえば。

「はー君、行こ!」

一ノ瀬がいるっていうこと。



「はー君って勉強得意?」

一ノ瀬がそう聞いてくる。

最近一ノ瀬はよく話しかけてくるようになった。

多分一ノ瀬が知ってる僕と変わってないって思ったんだろう。

だけど、僕は何も思い出せていない。

それが申し訳ない。

「ううん、得意じゃないよ」

僕がそう言うと、一ノ瀬は首を振った。

「いやいや!だって中間テスト学年1位だったでしょ?」

そう言われ、言葉に詰まる。

なんで知ってるんだ……。

一ノ瀬が言った通り、中間テストで学年1位をとった。

理由は勉強が好きだから。

だから知識が得られる読書も好きだし。

でもそれを言って引かれないだろうか。

それが怖くて一度も人に言ってこなかった。

黙っている僕に一ノ瀬は何も質問をせず、違う話題へと変えてくれた。

一ノ瀬と話すのは心地がいい。

いつか色々話せたらいいな、とも思う。

そんなことを考えていると一ノ瀬が急に僕の目の前に来て言った。

「……ってことでいい?はー君」

「え、あ、うん」

思わず肯定してしまった。

聞いてきた内容はわからない。

聞こうと思った時。

「では、帰りの会を始めます」

ちょうど先生が来た。

終わると一ノ瀬は先に帰ってしまい、聞けなくなってしまった。

明日聞けばいいか。

僕のそんな考えは甘かったと思い知らされることになる。



「春樹、おはよう」

「母さん、おはよう」

朝、リビングに降りて学校に行く準備をしていた時。

家のチャイムがなった。

「はーい」

そう言って母さんは玄関に行く。

ドアを開けると聞き覚えのある声が聞こえた。

何やら話している。

玄関に行くと。

「あ、はー君!」

一ノ瀬がいた。

「な、なんでいるの?」

僕がそう聞くと一ノ瀬は不思議そうに言った。

「なんでって。昨日一緒に行こうって言ったよ?家が近いから」

そんなことを聞いた覚えはない。

だけど心当たりはある。

あの聞き逃した時だ。

結構今日聞くのでは遅かったか。

それよりも。

「家が近いの?」

僕がそう聞くと、一ノ瀬の代わりに母さんが答える。

「お隣らしいわよ!」

「え」

「そう、隣なんだよ!」

隣って家にずっと住人がいなかったところだ。

何か思い出せそうで頭が痛くなる。

「大丈夫!?」

そう一ノ瀬に心配される。

そんな中、1つだけ思い出せたのは。

「……かれんちゃん」

そんな名前の子と話していた気がする。

僕がそう言うと一ノ瀬は嬉しそうに笑っていた。

「……よかった」

一ノ瀬はそう言う。

一ノ瀬、なんだろうか。

昔隣の家にいたかれんちゃんは。

でも名前は思い出せても他は何も思い出せない。

このパーツを埋めていければいいな。

そう思った。

そのあと、一ノ瀬と登校した僕は男子に問い詰められた。

……なんとかかわしたけど。