背中越しの王子様

そして文化祭当日。私はいつもとは反対方向の電車に乗って、先輩のいるS高校に着いた。


 年に一度の文化祭、グラウンドも校舎の中もとても活気があり、みんな楽しそうだった。


 S高校の文化祭は結構有名で、私以外の一般参加者もたくさんいた。


 先輩、何組なんだろう?


 文化祭に来たのはいいけど、もしかしたら会えないかもしれない。


 先輩の姿を探しながら校舎を歩いていると、


「…え、マシロちゃん…?」


 背中越しに先輩の声が耳に入った。


「…っ!!月宮先輩っ!!」


「いや、なんでここにいるの?」


 先輩は目を丸くしていた。ホントにびっくりしたんだな。


「実は先輩の学校が今日文化祭だって聞いて、来ちゃいました」


「来ちゃいましたって…」


「月宮ー!どこー?」


 先輩が何か言おうとした時、先輩の同級生らしき女の人の声がした。


「マシロちゃん、ちょっと来て!」


 先輩は私の手首を掴むと、どこかへ向かって走り出した。



「はぁ、はぁ、…もう大丈夫かな」


 私と先輩は息を切らしながら体育館の裏に隠れた。


「ごめんね、マシロちゃん」


 先輩は申し訳なさそうな顔をしていた。


 たぶんさっきの女の人は先輩と写真撮ったり、一緒にまわったりしたかったんだろう。


 やっぱり先輩は人気なんだな、と改めて思った。


「俺、ちょっとジュース買ってくるね」


「すいません、ありがとうございます」


 そして先輩は角の向こうへと消えていった。