背中越しの王子様

そして次の日の朝。


 今日はいつもより早く駅に着いた。


 またあの王子様と話したいな、と思って辺りを見回すと、


 電車を立って待っている王子様がいた。


 私とは逆側の方に立っているから、反対方向の電車にのるんだろう。


「おはようございます!」


「ん?…あぁ、昨日の」


 王子様は一瞬びっくりした顔をしたが、すぐに笑顔になった。


「はい、昨日はありがとうございました!…あの、名前、教えてくれませんか…?」


「名前?…俺は月宮。高校2年生だよ」


 やっぱり年上だ!敬語で話してて良かった。


「月宮先輩ですね!えと、私は日野マシロです!」


「マシロちゃんね。よろしく」


「よろしくお願いします!」


 やった!これで王子様…いや、月宮先輩と知り合いになれた。


 その時、キィィーっと、電車の止まる音がした。


「あ、俺電車これだ。またね、マシロちゃん」


 あ、もう行ってしまうんだ…。


 悲しい気持ちを抑えながら、私は笑顔で、


「はい、また!」


 と言った。


 そして先輩を乗せた電車が動き出した。


 男子嫌いの私が、また恋をするなんて信じられなかった。


 遠ざかっていく電車を眺めながら、頑張ろうと決意した。


 空は青く澄んで、雲は一つとしてなかった。