背中越しの王子様

「やっぱ人多いですねー」


「だな」


 どこを見ても人、人、人。


 なんか人に酔いそうな感じだった。


「あ、先輩!りんご飴食べましょうよ」


 私はりんご飴が大好き。だから夏祭りに来ると、必ず食べるんだ。


 りんご飴を買って、早速ひとくち。


 パクッ。


「ん〜美味しい〜!」


「そんなに美味しいのか?…じゃあ俺も食べようかな」


「はい!ぜひ食べてみてくだ、さ…い…」


 先輩の手が私の方に伸びて来て私の手首を掴み、そのまま自分の方に引き寄せた。


 そして私が食べていたりんご飴をパクリと食べた。


「せ、先輩っ…!」


「うん、美味しいな。…ごちそうさま」

 
 イジワルに笑う先輩を見て胸が鳴る私は、やっぱり重症だと思う。


「あ!先輩、射的対決しましょうよ!」


 私はりんご飴みたいな顔を先輩に見られないように、すぐにそっぽを向いた。


「マシロ、射的得意だっけ?」


「…得意ですよ!」


 ウソ。全然得意じゃありません…。


 話題変えようと思って目に入ったのが射的だっただけです。


「じゃあしようか。どうせなら罰ゲームとかつける?」


「…い、いいですよ」


 やばい。どうしよう…。