背中越しの王子様

「お母さん、行ってきます!」


 そう言うと、私は水色の浴衣で外へ出た。


『今度、一緒に夏祭りに行かない?』


 と先輩から連絡が来て、ずっと楽しみにしていた。


 そして今日がその日。気合い入れて浴衣まで着ちゃった。


 待ち合わせ場所に着くと、先輩が私に背を向ける形で立っていた。


 ゆっくりと忍び足で近づいて…。


「せーんぱいっ!」


「わっ!…おいマシロ、驚かせ…るな…よ…」


 あれ?先輩、固まっちゃった?


「先輩…?」


 私が再度先輩の顔を覗き込むと、先輩は顔を真っ赤にした。


「…可愛すぎだろ」


 かぁぁあっ。


 やばい。顔から火が出そう。


 私はなんとか心を落ち着かせて、先輩と一緒に夏祭りに向かった。