背中越しの王子様

 その日の夜、私はいつも通り家で過ごしていた。すると、


 ピンポーン。


 と、インターホンが鳴った。


「はーい」


 と返事してドアを開けると、


「久しぶり、マシロちゃん」


 そこには月宮先輩がいた。


「え…!?なんで先輩がここにいるんですか」


「だって、駅だとマシロちゃん、話聞いてくれないから」


 そして先輩に促されるまま、近くの公園へと向かった。


 周りにはまだ子供がたくさんいた。


「マシロちゃん、最近どうしたの?…LINEは返ってこないし、話しかけたら逃げるし」


「…先輩、なんで私の家知ってるんですか」


 そう聞くと先輩は、少し慌てた。


「えーっと…そう、マシロちゃんの友達に聞いたんだ」


 ウソだ。私先輩に友達を紹介してないもん。


「先輩。先輩って、"タクヤくん"だったんですね」


「なんで、それを…」


「だから私の家も知ってたんですよね」


 私はあの時、先輩を本当の王子様だと思ってた。…王子様でいて欲しかった。