背中越しの王子様

 次の日、私はいつも通りに駅に来た。


 ぐるりと周りを見渡すと、私が使う方とは違うホームに先輩の姿を見つけた。


 すぐに声をかけようとすると、


「タクヤ!」


 と、言いながら私の横を女の人が通り抜けて行った。


「ココナ、お前今日は車じゃなかったのか?」


 え…タクヤ…?


 そして今先輩と話している女の人は、文化祭の時も先輩と話していた人だった。


「え〜違うよ〜!…あ、そうだ!タクヤ、あの子とはどうなの?」


 女の人の言葉を聞いて、先輩は辺りを見回す。


 私は物陰に隠れてるから、見つからない。


「…まだ俺って気づいてないみたいなんだ。まぁ、気づかれない方がいいんだけど」


 あぁ、これで確定した。


 月宮先輩は、昔私をいじめた、"タクヤくん"だった。


 怒りからか、悲しみからか、右頬にひとすじの涙がこぼれていく。


 私は、他の人に見られないように、先輩たちに見つからないように、うつむいて泣いた。


 私の王子様は、嘘つきの狼だった。