「やばいやばい、遅刻するー!」


 私、日野マシロ。みんなからはシロって呼ばれてるの。
 

 今年の春からピッカピカの高校1年生!…なんだけど、今は絶賛爆走中。


 ドンッ!


「わわっ!」


 だから人にぶつかってしまった。


「…っいってぇーな。おい、何してくれてんだよ」


 うそ…よりによって男子なんて…。


「えと、あの、ご、ごめんなさい…」


「おい、俺の目を見て言えよ」


 やだやだやだ、男子怖いっ!乱暴だし、言葉悪いし、ホント何考えてるかわかんないっ!


 目を見て言えと言われても、男子苦手な私には無理難題なわけで。


 ずっと下を向いて黙っていた。


 その時、


「あの、謝ってますよ?…しかもこの子、怖がってます」


 透き通るような声に思わず顔を上げると、


王子様が私と男子の間に立っていた。しかも私を背中に隠すようにして。


 王子様の言葉に、男子は少し機嫌を悪くしながらも立ち去ってくれた。


「あ、あの…」


「あぁ、君、だいじょう…」


 王子様は私の顔を見るなり、目を丸くした。


 あれ?私の顔に何かついてるのかな?


「どうしました…?」


「え?あ、いや…。あ、キミあの電車じゃないの?」


 王子様が指を差した方向を見ると、まさに私が乗る電車が止まっていた。


「あ、そうです!…あの、助けていただきありがとうございました!」


 私は今にも出発しそうな電車に駆け込んだ。