「…………向こうで結界の維持をしているはずの颯が、何でここにいるの?」

風音の言葉に、颯は「流石だね」と開いていた扇子を閉じ、着物の懐に入れると風音を見つめた。

「……粗方のことは、片付いたからねぇ。様子を見にこっちの世界に来た時に、ちょうどアレンと出会ってね」

「粗方のこと?結界?」

颯の話についていけなくなった葉月は、頭を抱える。そんな葉月の様子を見た風音は「……僕の推測なんだけど」と口を開いた。

「多分、颯は……僕らがこっち来た後、何かしらの結界を張ったんだと思う。だから、颯は遅れてこっちに来たんでしょ?……颯のことだから、放置したままにする……なんてことは、しないだろうし」

「確かに……颯なら、しそうだね」

「…………ふっ。正解だよ……あの不思議な穴の位置を変えて、消えないように結界を張って来たんだ」

「穴の位置を変えた……って、一体どうやったんだ?」

颯の言葉に疑問を持ったレオナードは、そう言って首を傾げる。

「それは、内緒だねぇ」

怪しく笑う颯を見て、風音と葉月は同時に苦笑した。

「様子を見に来たっていうのもあるけれど……そろそろ帰った方が良い、と判断したのもあるね……日も暮れてきたし、明日学校があるのだろう?」