(……明らかに、悪霊の数の方が多い。しかも、アレス騎士団の皆は悪霊を払えない……となると、今ここには僕しか悪霊を払える人がいない……この量を一人で1匹ずつ払うとなると……相当きついぞ……あの、厄介だった巨人はいなくなったとはいえ……)

悪霊の群れを見つめた後、葉月は自分の手に握られた扇子に目を移した。

(……僕は、サポートすることしか出来ない……この時、風音や真冬ならどうする……?)

「……」

苦虫を噛み潰したよう顔をし、葉月は風音のいつも1人で戦っている姿を思い浮かべる。

(僕にも、広範囲で浄化出来る技があったら…………ん?待てよ?……颯にダメだって言われてたけど……確か、僕の能力で悪霊を浄化すると……悪霊の苦しみを、少しの間だけ背負うことになるんだっけ……それでも、やるしかないよね!)

葉月は扇子をしばらく見つめた後、悪霊に目を移す。葉月に向かって襲いかかってくる悪霊を蹴り飛ばすことなく扇子を開いた。

ふわりと温かい風が吹き、葉月の周りにいた悪霊は塵となって消えていく。

「…………よし。これで、全部浄化出来……た……?」

次の瞬間恐怖が葉月を襲い、葉月はその場で座り込んだ。

「葉月?」

妖を全て倒し終わったアレンたちが葉月に近づくと、葉月は怯えた表情をアレン達に見せて走り出す。突然のことにエイモンは驚くが、葉月を捕まえると地面に叩き付けた。

「……葉月くん、すまない!つい……」