ザァァァアッ。


 少し神秘的な、夜の海。俺たち以外には誰もいない。


「久しぶりだね、花火。…小学生以来かな?」


「あぁ」


 ワカナの声も耳に入らない。俺はそれくらい緊張していた。


 シュゥゥゥ…。


 俺たちは横に並んで花火をし始めた。


「きれい…」


 チラリととなりを見た。


「ホントだ。…きれいだな」


 そう言って視線を花火に戻す。


 それから俺とワカナは少しの間、少しの花火を、一緒に楽しんだ。


          ・


「今日はありがとう、誘ってくれて」


「…あのさ、ワカナ…」


 その時、


 ヒュルル…ドォォォン!


 空が急に明るくなった。


「え、花火?」


 空一面に色とりどりの花火が打ち上げられていた。


「あ、ゴオ、さっきなんて言おうとしたの?」


「…いや、なんでもない」


 さっきは勢いに任せて言ってしまいそうだった。


 でも部活が終わるまでは、我慢しないと。


「そう?ならいいんだけど」


 再び2人で空を見上げる。


「ゴオ、辛いだろうけど、きついだろうけど、頑張ってね。…私が支えるから」


「うん、ありがとうな」


 ワカナが応援してくれたら、俺、なんでもできるような気がするから。


 花火が消えた夜空には、幾千もの星が煌めいていた。