「ゴオ、走れ!」


「はい!」


 2年生になって、練習の量が格段に上がった。


 先輩から怒られることも増えた。


 でも、後輩に情けない姿を見せられない。


「よし、一旦水分補給!」


 キャプテンの声に、全員ではい!と返事をする。


「みなさん、お水と塩タブレットです!」


 ワカナと1年マネージャーのユリナが、一人一人に水筒とタブレットを配ってくれる。


 ワカナが俺に、いや正確には野球部のために働いてくれるのが嬉しい。


 ワカナが働く姿を見つめていると、


「ゴオ、お前まさか…」


「はい?」


 キャプテンから声をかけられた。


「ワカナのことが好きなのか?」


「…!?」


 俺、そんなにわかりやすいのか?


「え、えーっと…いや、あの」


 いきなりすぎて、頭が整理できない。


「いや、まさかな!お前も知ってるだろ?野球部は部内恋愛禁止だってこと」


 …は?


「…はい、知ってます」


 いや、知らない。そんなこと言われたか?


 でも先輩の前でそんなことは言えなかった。


「マネージャーも例外じゃないからな?」


 …ウソだろ?