「ワカナー、先行ってるよ?」


「え、ちょっと待ってよ!」


 最高学年になり、いよいよ次が最後の大会。4番バッターとキャプテンを任されたゴオは、今までで1番張り切っている。


 私は急いで荷物を詰め込み、ゴオのいる教室のドアへ走った。


 ドンッ!


 私は立ち止まっているゴオの背中にぶつかった。


 大きい背中の向こう側を、首を伸ばして見ると、


「ゴオ先輩!お迎えに来ました〜。行きましょ?」


「え、ユリナ?」


 そこには、私の唯一の後輩マネージャー、ユリナがいた。


 あれからユリナは、私のことなんて気にもせずにゴオに話しかけていた。


 ゴオも迷惑そうにはしているが、まんざらでもなさそうだ。


 モヤッ。


 ん?モヤッ?なんで今私、モヤッとしたんだろう。


 今の私は、その答えを見つけることができなかった。


「ワカナ、水ー!」


「ゴオ先輩!お水です!」


「ワカナ、タオルちょーだい!」


「ゴオせんぱーい!タオルどうぞ!」


 ユリナは、私が頼まれたことも間に入って横取りする。


 しかも渡す時は語尾にハートがつきそうな感じで話している。


 もう、ホントなんなの。


 また私の胸が、モヤッとした。