そして遂に放課後になった。


 私はすぐに隣の如月くんに声をかけようとした。


 が、早乙女さんに先を越されてしまった。


 放課後になった瞬間に早乙女さんは如月くんに、


「伊織くん、ちょっと来てくれる?」


 と、声をかけて、どこかへ行ってしまったんだ。


 次々と人がいなくなる教室で、1人席に座って如月くんを待つ。


 …早乙女さん、絶対チョコ渡すんだよね。


 心が、少しモヤモヤした。




 少し経つと、早乙女さんだけが帰ってきた。


「…七瀬さん。あなたもしかして伊織くんにチョコ渡すの?」
 

「えっ、は、はい」


「無駄よ。あなたも聞いてたでしょう?彼、好きな人からしかもらわないって。…私、彼に受け取ってもらえたから」


 早乙女さんはそう言い残すと、足早に教室を去っていった。


 …え、受け取ってもらえた…?


 ということは、如月くんの好きな人って、早乙女さん…?


 私の中で、少しずつ大きくなっていった勇気が、一気にしぼんでいったのを感じた。