「…で、これはこうなるので〜」


 今は数学の授業中。


 私が如月くんにチョコを渡す放課後のことを考えたら、授業の内容なんて全然頭に入ってこない。


 先生の声をBGMに、頭の中で告白の練習をくり返す。


 ドキドキと鳴る心臓を、右手で服の上からおさえる。


 頑張れ、私…!


「…あのさ、七瀬さん」


 急に如月くんに話しかけられて、私はビクッとしてしまった。


「は、はい、なんでしょうかっ…!」


 やばい、びっくりしすぎて声が裏返ってしまった。


「なんか最近疲れてない?…心配」


 そういえば、最近バレンタインのチョコ作りとかで寝不足かも。


 というか、なんで気づいたの…?


「あ、ありがとうございます。でも、大丈夫です」


「そう?でも気をつけてね」


 と言うと、如月くんは再び前を向いた。


 はぁ〜びっくりした。急に話しかけないでください。心臓に悪いです。


 私はさっきのことでドキドキが加速した心臓を、少しでも落ち着かせるために、今度は両手でゆっくりとおさえた。