私、七瀬(ななせ)つむぎ、高校3年生。


 教室の窓側の席に座って、窓から空を見上げていると、後ろから声をかけられた。


「つむぎ、おはよう!」


「おはよう、莉子ちゃん」


 私は親友で隣の席の姫野(ひめの)莉子(りこ)ちゃんと挨拶を交わす。


 莉子ちゃんは私の小学生の頃からの親友。


 とっても可愛くて、頼れる女の子なんだ。


「そういえばさ、つむぎ、あの人とはどうなの?」


 莉子ちゃんが小声で言った。


「いや、まだ話せてないよ」


 莉子ちゃんの言う"あの人"とは、私の好きな人。


「伊織、おはよ!」


「おはよう、伊織くん!」


 たくさんの声が聞こえてくる。


 その好きな人というのが、登校してきて早々にたくさんの友達に囲まれている彼。


 彼の方を見ていなくても、周りの反応で登校してきたことがわかる。


「おはよう、みんな!」


 私の好きな人は、同じクラスの如月(きさらぎ)伊織(いおり)くんなんだ。


 如月くんは見ての通りとっても人気者。


 頭もいいし、スポーツ万能。おまけにカッコいいなんて、どれだけ完璧なんだろう。


 如月くんは、私とは本当に正反対の男の子。


 そんな如月くんのことが、私は1年生の頃から好きなんだ。