ーー特急列車に揺られて約1時間が経つ頃、わたしは東京駅に無事に着く。 そして、スマホのナビを頼りに授賞式会場の建物を探しあてる。 ちょっと緊張気味に入ると、男の人に「汐碇出萌さんですね?」と部屋まで 誘導してくれた。 式は思ったより短く、あっさりと終了する。 外に出ると、生温かい風がわたしの横を吹き抜けていったーー、と同時に 誰かがわたしの名前を呼んだ気がした。 キョロキョロと辺りを見渡すと、一台の黒い車の中の窓から明らかにこちらに 手を振っている人影が見える。