わたしは、あえて返事はせずに彼の次の言葉を待つ。



「最初会った時は、地味なただの泣き虫女だと思ってた。誰とも喋んない
大人しいヤツだなって。でも、違った。本当はおせっかいで、優しくてーー、
関わる度にお前の色んな一面に惹かれたんだ。でも」



那緒はいったん言葉を区切って、わたしと同じ空を見る。



「ーーでも、俺は彩乃も大切なんだ。まぁ、ちょっとアイツ、口悪いけどさ」



視界が、ゆらゆらと揺らぐけれど、歯を食いしばって何とか
持ちこたえるわたし。