「那緒………、なの? 本物?」



その言葉に彼は、一旦わたしから体を離す。



「本物に決まってんだろ。ごめんな、出萌、こんなに長く待たせ
ちゃってさ………」



眉をハの字に下げる那緒はすとんとわたしの隣に座り、そっと涙を指で
すくいとってくれた。



けど、それでもわたしはなんだかムカついてて。



「ずっとずっと待ってたのに……、どうしてもっと早く来てくれなかったの?
わたし、すっごく寂しかった………」



「ごめん。今日は約束守るから、出萌の側にいるから………」



そう言うと彼は、再びわたしを包み込んでくれた。