袖で、何度もぬぐっても、とまらない涙の雨に、わたしは彼の名前を
口にした。



「ううっ、那緒っ………、那緒………」



こんな所で、泣いちゃいけないとわかっているけど、どうしても気持ちに
抑えがきかなくて。



こんな時、よく本とかでは王子様が現れるけど、そんなのはただの夢。



そう思った時。



「ーー出萌、大丈夫か!?」



突然視界が暗くなり、わたしは突然、抱きしめられた。



金色の髪が頬に、触れる。



わたしの頭は正直混乱していた。