「………なんとか、その子には諦めてもらう。頑張るから、だから、
そのあと俺の恋人になってもらいたい」
那緒の声は驚くほど、弱弱しくて微かに震えているのが分かった。
「分かったよ、それまで待ってる。ずっとわたし、待っているから」
その言葉にわたしは偽りなんてない。
わたしは、初めて那緒と会ったときを思い出して、今度は自分が彼の背中を
何度も何度もさすってあげた。
「ねぇ、那緒、でもわたしのどこを好きになってくれたの?」
「えっ、あー……、泣き虫だけど、意外と気が強いところが、かわいいなって
思って、そんで気がついたら好きになってた」

