わたしは、重たい心のまま階段を降りる。 するとーー。 目の前から上って来たのは、紛れもなく那緒。 「おっ! 出萌、進路指導終わったのか? 俺、これからなんだ」 けれど、わたしはそれに何も答えず、俯いて通り過ぎようとしたところを、 手を握られて引き止められる。 「おい、どーしたんだ? 何で無視するんだよ」 不思議そうにする、那緒の声に、相変わらず冷たい手の感触が伝わってきて、 思わず、視界がゆがんだ。 じっと見つめる那緒に根負けして、わたしはさっきの出来事を、話し始めた のだった。