「お前、名前は?」 その言葉は、語り掛けるように優しくて、涙でぐちゃぐちゃであろう顔 のまま、わたしは思わず振り向いてしまった。 「………汐碇出萌」 「俺は、藍染(あいぜん)那緒(なお)。出萌……だっけ? ちょっと ここで座って落ち着こうぜ」 そう言って、わたしをもう一度座らせてから、彼はわたしの隣にどかっと 腰をおろす。 わたしが再び泣き始めると、彼は背中をさすってくれた。 何度も、何度も。