それを聞いた那緒は、ちょっと目を見開いていたけどすぐに、口元が 自然な弧を描く。 「俺も、出萌のことすきだよ。絶対忘れねーから……、じゃ、俺、そろそろ 帰るわ。じゃあな」 「うん、じゃあね」 黒い車がエンジンの音を鳴らしてゆっくりと走り出す。 わたしは、もう一度心の中で「那緒、好きだよ」と思ってから、もう見えなく なってしまった車に手を小さく振ったのであった。 END