彼はボトルのスクリューキャップを外してグラスにシャンパンを注ぎ、二度目の乾杯をした。口の中で無数の泡が心地よくはじけ、冷たいシャンパンが喉元を通っていく。

「あんまりグビグビ飲まないようにしてくださいね。お風呂に入って血行良くなっているので、すぐ酔っちゃいますよ」

 彼にそう言われて、一息でグラスの半分以上を空けてしまっていたことに気づいた。品のないことをしてしまってちょっと恥ずかしい。

 彼はグラスを置いて濡れた前髪をかき上げた。オールバックの髪が男らしく色っぽい。かっこよすぎて直視できない。

「とってもロマンチックですね。私には背伸びしすぎかも」

 グラスに夜景をかざして、光の泡の粒がきらきらと輝くそれを眺めた。

「そんなことはない。君は素敵な大人の女性ですよ」

 彼は私のグラスの隣に自分のグラスを並べた。彼の視線は私に向いていることに気づきながらも、私はグラスの夜景を眺め続けた。

「窓の向こうからはこっち見えないんですかね?」

 ドキドキを紛わせるためにしょうもないことを聞いた。

「マジックミラーにでもなってるんじゃないですかねぇ。そうでなくても、いいじゃないですか。見せつけてやれば」

 彼は後ろから私を抱いて身体を引き寄せた。背中に彼のモノが当たっている。

「ふぇえ!?啓之さん!?ちょ、早くないですか?」

「うーん、あまりに君がかわいくて、つい」