「せっかくですから、一緒に夜景を楽しみましょう」

 彼は何でもないように浴槽にお湯を溜め始めた。

「え」

 それって、一緒にお風呂入ろうってことだよね…?

「嫌ですか?」

「嫌っていうか、恥ずかしいです」

「じゃあ、先に入っててください。入っていいとき言ってくださいね」

「了解です」

 私は先に入ってメイクを落とし、身体と頭を洗ってからお風呂に入った。裸ですっぴんなのも恥ずかしい。でもジャグジーの泡で私の身体ははっきり見えないはず。一緒にお風呂に入るなんて初めてなので、緊張でドキドキしている。意を決してリビングで待っている彼に声を掛けた。

「入っていいですよ」

「はーい」

 彼の裸を見るのも恥ずかしくて夜景を見るふりをして窓の方を向いた。浴室のドアを開ける音がして、ひたひたと裸足の足音が聞こえる。窓に反射して彼の裸がうっすらと映っているのが見えた。私は思わず顔を伏せて視界を暗くさせた。

「ああどうしよう」

「どうしたんですか」

 彼は笑いながらシャワーのハンドルをひねった。シャワーの水音がなぜか緊張感を増長させる。しばらくして彼も湯船に入ってきた。

「夜景、きれいですね」

 すぐそばで彼の声が聞こえてくる。心臓の高鳴りは早まる一方だ。

「まだ飲めますか?冷蔵庫に入ってたシャンパン、持ってきたんですけど」

 彼は右手のボトルと左手の2つのグラスを掲げた。

「飲みます!」