私がバイトのない日は、西島さんの家で私が夕食を作り、一緒に食べてまったり過ごすことが多くなった。実家暮らしの私は、料理の腕前が決していいわけではないが、好きな人に少しでも喜んでもらいたくて、母に教えてもらったりネットで調べたりして料理のレパートリーを増やしつつある。


 イヤリングのほとぼりが冷めた頃、その人との出会いは予想外かつ唐突に訪れた。そして案外早いタイミングでの出会いだった。その日の夜も、ルーティーンになりつつある夕食作りのために彼の家を訪ねていた。彼が帰ってくるのは8時以降になるらしいが、彼の帰りを待ちながら夕食を作るのが常だ。

7時を過ぎた頃だろうか、料理を初めて間もない時間だった。野菜を洗っていると、ピンポーンとインターホンが鳴った。

宅配だろうか?

インターホンの画面には、OL風の女性が立っているのが映っている。玄関のドアを開けると、家主ではない私が出てきたことにその女性は驚いて部屋の番号を確認した。

「あら、間違えたかしら?」

「いえ、ここは西島の家ですけど、どちら様ですか?」

「私は…あら、あなたもしかして、啓之の彼女さん?」

「そう、ですけど…」

 西島さんのことを啓之と呼ぶその人は、目鼻立ちがはっきりしたきれいな大人の女性だった。睫毛が長く二重のくっきりした大きな目が印象的だ。年は私より幾分上のように見える。

「ちょっとお話できる?」