「好きな人の過去が気になるのは当たり前だろ。今までにどんな人と付き合ってきて、どんな恋愛をしてきたのか、って…。でも、過去の経験が西島さんをつくってきたわけで、その西島さんをケイちゃんは好きなんだろ」

「そう、ですね」

「ま、俺は西島さんを好きなケイちゃんのことがいまだに好きなんだけどな」

「え?」

「ケイちゃんに嫉妬されてる西島さんに嫉妬してるわ、俺。まだケイちゃんのこと諦め切れてないって思った」

 突然のことに立ち止まってしまった。前を歩く彼は、歩みを止めた私を振り返った。暗闇にぼんやりと見えるその顔は切なげだ。

「別に、ケイちゃんたちの仲をどうこうしたいわけじゃないから安心しな」
彼は先程の表情とは打って変わってカラカラと笑った。

「でも、俺の隣はまだ空いてるからな。今日みたいに、俺がいつでも守ってやるぞ!」

「残念ですが、私の隣は空く予定がないので大丈夫です」

「またそうやって!ケイちゃん冷たいなあ!なんて、俺に気を持たせないようにしてんだろ。そういう気遣い、いらねぇんだよ。このやろ」

 彼はゲンコツで私の頭をぐりぐりとやった。

「いた、痛いですって先輩!」

「うるせえ!」

 三宅先輩とは、この距離間が丁度いい。これはこれで居心地がいいのだ。