翌日の午後、私はまたトモちゃんと学生会館の休憩スペースでコーヒーを飲みながら卒論を書いていた。新たな不安の種を抱えてしまったので、休憩のタイミングでトモちゃんに相談してみることにした。

「過去の恋愛ねぇ。長く生きてりゃ付き合った人の数もそれなりにいるよ。昔の女の話聞いたって不毛でしょ。所詮自分とは違う人間なんだから比べたってしょうがないことだし。ふたりの間に何があったかは知らないけど、聞くだけムダムダ」

「だよねぇ…」

「恋愛のトラウマがあるとして、それをわざわざ蒸し返して傷口抉ることないでしょ。それに、もう恋愛はしないって思ってた人がまた恋愛始めたんだよ。それも自分と。すごいことじゃん」

「そうかなあ。でも、元カノが西島さんと寄りを戻したいんじゃないかって思うと不安だよ…」

「トラウマ植え付けた女の元に戻るとは思えないし、西島さんは慧がいるのに他の女になびくはずないって。自信もってちゃんと彼女やんなよ」

 トモちゃんは、コーヒーを飲もうとした私の背中を力強くバシッと叩いたので、危うくコーヒーを吹きこぼしそうになった。

「あっぶな!」

「私は慧のこと応援してるからね」

「ありがと。ちょっと元気出た。そろそろバイト行くね」

「うん。いってらっしゃーい」

 私はコーヒーを飲み干し、パソコンをバッグにしまってバイトへと向かった。